BlueDot創業者の物語|Dr. Kamran Khanが挑んだ感染症AIと早期警戒

新型コロナの流行を世界に先駆けて検知したAI企業、BlueDot。その背後には、カナダの感染症専門医 Dr. Kamran Khan(カムラン・カーン) の挑戦があります。2003年のSARS流行を経験した彼は、「感染症は病院で診断してからでは遅い。広がる前に予測しなければならない」と痛感しました。本記事では、彼がどのようにBlueDotを設立し、どのようにAIを使って感染症の早期警戒システムを作り上げたのかを紹介します。

目次

感染症AIで世界を驚かせたDr. Kamran Khanの物語

2019年12月、中国・武漢から世界に広がった新型コロナウイルス。世界保健機関(WHO)が公式に注意を発表する前に、「何か異常が起きている」と世界に知らせた企業があります。

その名は BlueDot(ブルードット)
そして、その中心にいるのが感染症専門医 Dr. Kamran Khan(カムラン・カーン) です。

この記事では、カーン博士がどのような経験からBlueDotを立ち上げ、どのようにしてAIを使って感染症を世界に先駆けて検知できる仕組みを作ったのかを紹介します。


医師としてのキャリアとSARSの経験

カーン博士は、カナダ・トロント大学の感染症内科医、公衆衛生学の研究者としてキャリアをスタートしました。

2003年、彼の人生を大きく変える出来事が起こります。
それが SARS(重症急性呼吸器症候群)流行 です。

当時、トロントは世界でも大きな被害を受けた都市のひとつ。病院は混乱し、感染が広がるスピードに医療現場が追いつかない状況でした。前線で治療にあたったカーン博士は、強く思ったのです。

「感染症は、病院で診断・治療してからでは遅すぎる。
広がる前に予測し、警告する仕組みが必要だ。」

この体験が、後のBlueDot設立の原点となりました。


BlueDotの設立

SARSの後、カーン博士は「感染症の早期警戒システム」を構想し、2008年に BlueDot を設立しました。

BlueDotのアイデアはシンプルですが画期的でした。

  • 世界中の ニュース記事・公式発表・学術論文 をAIで解析
  • 65以上の言語に対応し、異常な感染症の兆候を素早くキャッチ
  • 航空券予約データ・旅客移動データ を組み合わせ、「感染が次にどこへ広がるか」を予測
  • 気象や人口統計などの情報も加え、感染拡大のリスクを数値化

まるで 感染症の地震計 のように、世界の“揺れ”を感じ取る仕組みをつくったのです。

最初の頃、投資家や行政は懐疑的でしたが、「次のSARSを防ぎたい」というカーン博士の思いは強く、少しずつ研究資金と協力者を集めていきました。


COVID-19での衝撃

BlueDotが世界的に注目されたのは、2019年末の新型コロナ流行です。

2019年12月31日、BlueDotのAIは中国・武漢での不明な肺炎の報告を検知しました。
なんとこれは、WHOが公式に発表する約1週間前のことでした。

BlueDotはすぐに顧客である各国政府や航空会社、病院に「新しい感染症が拡大する可能性」を通知しました。その後の急速な世界的流行は誰も止められませんでしたが、BlueDotが最速で異常をキャッチした事実は、大きな驚きをもって受け止められました。

世界のメディアはこぞって報じ、「AIがパンデミックを予測した」としてBlueDotの名前は一躍有名になりました。


カーン博士の想い

カーン博士は医師としての経験から、次のように語っています。

  • 「感染症は国境を越えて広がる。だから国単位ではなく、グローバルにデータを共有する仕組みが必要だ。」
  • 「誰もが平等に守られるために、科学・データ・公衆衛生を結びつける必要がある。」

つまり、彼の原点はSARSでの教訓にあります。
病院で一人ひとりの患者を救うだけでは限界がある。社会全体を守るには、広がる前に異常を見つけるシステムが欠かせないのです。


まとめ

BlueDotのストーリーは、感染症の現場を知る医師が「もっと早く動かないと人は救えない」と痛感したことから始まりました。

その強い想いがAI技術と結びつき、やがて世界で最も早くCOVID-19を検知するシステムを作り上げたのです。

Dr. Kamran Khan(カムラン・カーン) の歩みは、テクノロジーの話であると同時に、医師として「人を守る」ための挑戦の物語でもあります。

BlueDotの成功は、次のパンデミックに向けて世界がどう備えるべきかを考えるヒントを与えてくれるでしょう。

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この記事を書いた人

医師として10年以上働きながら、2人の子どもを育てている母です。
医療の現場で働く中で、「このままの働き方をいつまで続けられるのか」と感じるようになりました。
同時に、AIやプログラミングが医療や社会を変えていく流れを感じて、
「もし私もこの波に乗れたら、何かが変わるかもしれない」と思うようになりました。このブログでは、AI・プログラミングの学び直し、医師としてのキャリア再構築、そして子育てと挑戦の両立という、日々の試行錯誤を記録していきます。
まだ“できた人”ではなく、“変わりたいと願う人”としての記録です。
私の迷いと実験の記録が、誰かの次の一歩のヒントになれば嬉しいです。

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